2018年に一度告知しておりますが、ラムサでは伝統的なオペラハウスに似た馬蹄形多層客席でありながら、2020席前後(オーケストラピットを使用した状態で1850席超)の席数を持ち、サイトラインと建築音響性能に優れる客席形状を開発しています。
新馬蹄形とよばれる21世紀の馬蹄形客席は、従来の馬蹄形客席とは似ていて全く異なるものであり、すでに欧米ではスタンダードになっています。19世紀までの馬蹄形客席は、舞台と客席、客席相互の高い親密感および一体感に優れているものの、舞台と客席が向かい合うだけの客席に比べて、見切れ席が生じやすい欠点から、欧米でも20世紀半ばに、機能主義的な扇形客席が均等な舞台の見え方をするという理由で取って代わられたのですが、1990年代から見直しが行われ、抜本的な改良を加えることによって、むしろ20世紀半ばを席巻した扇形客席より優れていることが世界的に認められています。
ラムサではこの形式の客席を10年前から研究しておりましたが、2018年に自信をもって推奨できる段階に達しました。舞台間口を広げることで収容人数を増やすのではなく、プロセニアム間口は約15~16mを基本として、オペラやミュージカル等に多い、間口14.5m(8間)程度でも左右の見切れ席が発生せず、また全ての席において傾斜を十分に取り、前列の頭越しにオーケストラピット内の指揮者を観ることができます。各階のバルコニー席の列は上階の被りが少なくなるよう奥行きを限定しているため、最後列でもバルコ二―自体に隠れる舞台内の見切れも、生音の減衰も発生しません。鑑賞者から舞台前端までの最大視距離は斜めに計測して1階から3階席で31~32m、4階席最後部で38mとこの規模では短いものになります。客席数は新国立オペラを超え、見やすさの点ではるかに優れ、男性より座高の低い女性でも、舞台先端はもちろんオーケストラピットまで見えます。したがってピットを音源とする直接音・初期反射音が客席に到達し、遅延の少ない音の成分がより多く客席に届き、音の明瞭さが増すと考えます。プロセニアムは可動機構により20m前後まで拡張できますが、その場合でも客席形状は変えずにすみます。合わせて可動シェル(音響反射板)の設置も可能です。あまり推奨しませんが2200席前後まで収容人数を増やすことも対応可能です。
凝縮した空間に2000席超の観客が入り、客席と舞台が一体になり、「よく観え」「よく聴こえ」、演者の息遣いが隅々まで伝わるような、高い「演者-鑑賞者の相互作用」を生み出す劇場となります。
(※日本の建築基準法、消防法に従っていますが、客席数等は建設地の地域条例その他の要因により若干変動します)。