2015年にあてもなく開業してからここまで辿りつけたことは、皆様のおかげであり、ひとえに感謝いたします。いろいろ反省が多々ありますが、観覧施設の視覚設計の研究に関する重要性に気づき、それを中心テーマに研究と、それに基づく実践を行うという両輪でなんとかここまで続きました。
10年前に設計者としての道を敢えて捨て、コンサルとしての道を選びました。果たして世の中に役に立つか自信が持てませんでしたが、初期段階でコンサルを行った有明の音楽アリーナがコロナ前に開業し、昨年は5月に開業したTheater Milano-Zaが開業しています。Milano-Zaは、革新的な舞台演出が可能であり、視覚的には舞台が近く、見やすいと好評を得ているようです。見え方の検証はView-esTを用いました。
先日、視覚設計においてコンサルをした幕張の1万人のアリーナが開業しました。今後どのような評価が得られるかは楽しみでもあり心配でもあります。これも検証はView-esTを用いました。
そのほか、ステルス的に設計支援した公共ホールがいくつか建設中です。
今期は、従来とはアプローチのことなるサイトライン理論をまとめており、計算プログラムを作成しつつ、実証を進める段階におります。究極的に目指すところは、【ジェンダード・イノベーション】でもあり、さらに性別年齢に関わらない【身体寸法の多様性】に配慮した合理的な観客席設計が容易に実現できるように支援することです。
古典的なサイトライン理論では無視されていた、例えば【身長差が大きく異なる観客が前後に座った場合】、例えば前列が身長170cmの成人男性で、後列が身長120cmの小学生であっても、後ろの観客が普通に舞台を見える計画が可能になります。しかも従来と同じボリュームの中に従前と同等の収容人数を備えながら実現できるようになります。同時に後方の段床が高くなりすぎることも回避できる見通しがついています。
開発中のこの理論は魔法のような話と思われるかもしれませんが、特に既存改修にも有効であることが分かっています。創立10周年となる来年夏までにはまとめたいと思っております。
代表取締役 西 豐彦